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冬の朝

 雨戸を開けると、冷たい空気が流れ込んでくる。晴明[はるあき]は、さむ、と呟いて身を震わせた。
 その彼の足元に、するりと近づいた影がある。
「今日も寒いわね」
 晴明は視線を落とし、笑った。
「そうだね。おはよう、風花[ふうか]さん」
「ええ、おはよう、晴明」
 挨拶を返して晴明を見上げてくるのは、一匹の猫だった。
 雪のように白い毛並みをしていて、ピンと張った三角の耳は形がいい。けれど、なにより目を惹かれるのは、色違いの瞳だ。右目が金、左目は銀。晴明はいつもこの瞳を綺麗だと思う。
 彼女は、安倍家に憑く猫又だ。
「いつも思うけど、風花さんて寒さに強いよね」
 晴明が首を傾げれば、風花の瞳が面白そうに笑む。そうして、人間のように小首を傾げた。
「そうでもないわよ? 寒いのは好きじゃないもの」
 だから、早く閉めてくれると嬉しいわね、と言われたので、晴明は素直に窓を閉めた。それから、足元の猫を抱き上げる。外気に晒された体が冷たかったので、腕の中に抱き込んだ。風花が目を細める。
「温かいわ」
「でしょ?」
「ええ。ところで晴明」
「なに?」
「晴音[はるね]が、朝ごはんが出来た、て言ってたわよ」
 その言葉に、晴明が目を瞠る。
「そういうことは早く言って!」
 姉さんに怒られる! と慌てる晴明の様子に、風花は楽しげに喉を鳴らしたのだ。

 〈了〉

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